光彦さんのことなど 

名古屋市千種区本山の交差点、四谷通りを名古屋大学の方に上ってゆく坂の途中に「ハンキー・ドリー」という名のロック喫茶が在った。ロック喫茶ではあったけど店内は明るく、光彦さんはまだ二十歳前の若く美しい店主であった。(店主は若くて美しい母上だったかもしれないが)デビットアダルツと云うバンドでギターを弾いているそうだと聞いた。バンドは少し前までデビットボウイズという名前だったそうだ。(ボウイがアダルトに成ったのだなと)

ぼくはそこで時々ココアを啜ってロック雑誌を読んでいた。
丁度高校卒業の年、閉店パーティに顔を出し、在庫処分のロックマガジンを創刊号から数冊買った日の事だろう、サタデーナイトスペシャルと云うバンドのボーカリスト、マコトさんにベースを弾かないかとスカウトされた。ギターのキオトさんも居た。どんなのを演るんですかと尋ねると、ビーチボーイズとかベイシティローラーズを日本語で、と言われたので、なんだと、呆れ、自分は次の春から上京しバンドを始めるので(という根拠の無い確信で)断わった。

「本山ウエスト」というコンサートがあったのはその翌年だったか、出演は高校の先輩だった杉林恭雄さんの参加していたウエイト、デビットアダルツ、サタデーナイトスペシャル。デビットアダルツでは光彦さんのギターの巧さに驚いた。サタデーナイトスペシャルは背の高い可愛らしいベーシストを加えて見事な演奏、なにより選曲と歌詞のセンスにやられた。ザ・フーのkids are all right を ガキはへっちゃら  と歌い、ビーチボーイズのサーフィンUSAに、いっさいがっさいゆーえすえー、のコーラスを付け、でーきるのかサーフィン、サーフィンゆーえすえー、と歌った。
良い声だった。上京しても未だ何も始められてない自分は、ここに加わらなかったのは失敗だったと思った程だった。

ほどなくしかしサタデーナイトスペシャルは解散した

そしてマコトさんとキオトさんは新しいバンドをデビットアダルツのかんじさん、光彦さんと始めると云う報せが伝わった
これが  ピヴィレヌ

このバンドはヒリヒリとした速さでポップであることを突き詰め、聴き手に迫り、なおかつ置き去りにする様な性急さで、駆け抜けていった
各人が自分の不得意な楽器に持ち替え、各人がひとつづつの「音」を持ち寄って付けたバンド名
十分にいびつな無名性
ぼくは夢中になった。同じ頃東京や関西で起きていた日本のパンク/ニューウエイヴよりも理解、解釈される聴き手、受け手のシーンが無い分?ピヴィレヌは極端で、孤高だった
(今では入手困難の極、ELLレーベルからのアルバムのライナーの写真には、溜池に有った東芝のカッティング工場に付いて行ってるぼくが写っているのは、そう、追っかけだったからです)
レコード発売にあわせて中区役所ホールでコンサートを行なうのに前座が必要となった時
バンドも形になっていないのに、ぼくは手を上げ
曲を聴く事もなく、彼らはそれを認めてくれて
光彦さんの自宅に有った練習場ーHIKOスタジオ=木津根スタジオ(木津根町にあった)を午前中自由に使わせてもらうという僥倖に恵まれ、そこから約一ヶ月
ぼくは自分のバンドを立ち上げることができたのだった
この時のバンド「生産体操」が、その後  「すきすきスウィッチ」 に、成った
この時書いた初めての曲が「はじめて」なのだった

ピヴィレヌはしかしその後ほどなく解散
自分たちの熱量ゆえに自分たちをつなぎとめておくことが出来なくなった、かの様だった
あるいは、聴き手がついて来られないことを果無んだ末、のようだった
ぼくは彼らを東京に呼んでシーンに見てもらうことができなかったのを実に悔しく思った
(その後、謎々商会をはじめとする幾つかのバンドを呼んで迎えたのは、この轍を踏まないゾと強く思ったから)
キオトさんはその後qujilaを始めた
光彦さんはヒコスタジオを移転発展させ、楽器演奏から録音編集まで凡ゆる事を自分で行なう事を自分に課して、様々な形態で活動を続け…

数十年経過

2011年に演奏活動を再開した光彦さんの事を2012年長い蟄居から明け知ったぼくは2013年連絡を取りお互いの作品を送り合い2014年正月に約四半世紀ぶりに再会をし

六月のフェスに誘われた

金魚/HIKOS!は昨年聴いた新譜の中で、一番妙だった
出てくる音が今っぽく無い、かと言って古臭い訳では無い
ライナーを見ると多くの曲が1982年に既に仕上げられている
つまりこれはヒコちゃん(もう、そう呼んでしまおう)の
出したい音が詰まっているのだ!
そしてそれを世に出す意義を彼は信じているのだ!
ぼくは唸った。そして、また勝手に買って送って人に薦めている。何枚も。

人は時々何かに応えるためにしなくてはいけないことがあって
6/15はぼくはそれをするために
名古屋に行って歌い演奏する         (佐藤幸雄記す)

 

 

イケナイ大人達のイケないロック・フェスティバルvol.2
とき/6月15日(日) 15:30開場 16:00~21:00演奏
出演/佐藤幸雄+、HIKOS! ほか
場所/大須M.I.D (名古屋市中区大須3-12-35 グッドウィルB1F)
チケット/前売3000円、当日3500円(+ワンドリンク500円)
前売は月とライオン(052-741-7887) 有限会社青空(052-251-7181)まで。